豊饒の海(一)
春の雪
三島由紀夫(著)
1969年1月 発行 |
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小 説
結末にビビった。「え?」って。
物語が終わりに近づくにつれ、まさかな、とは思ってたんだけど
そうなって「うわー」って。
おもしろかった。
そして「おもしろかった」の前に「よかった〜」がつく。
だから「よかった〜おもしろくて」ってことだ。
どういうことかといえば、こういうことだ。
この小説はある知人に薦められて読んだんだ。
オレは今まで三島由紀夫の小説を読んだことがない。
名を残した作家には違いないだろうが、多くの人が
そうであるように、オレの中の三島由紀夫のイメージは
軍服を着てなにやら演説して、で、割腹自殺した人でしょ?
ってことになってる。
作家としてのイメージは、なんか小難しいこと書いてんでしょ、的な。
オレは古い時代の「文学」をあまり読まない。
オレの言う古い時代とは夏目漱石や太宰治や、なんかまぁ、
そういうやつだ。それらが同時代のものなのかは知らないが
なんかそういうやつだ。もちろん三島由紀夫も。
そういう小説は、基本、新刊や再発の文庫で買うことはないから
一昔前の文庫で読むことになるのだが、まず字が小さい。
それで嫌になる。そして旧仮名使いなんかが出てこようものなら
なにこの小難しいやつ、とかなって読む気がしない(笑)
所詮、オレは理系人間だから、文学がどったらこったらは
知ったこっちゃない。
あと、小説の時代背景も、なんとなく大正時代でしょ?
なんとなく大正時代、ってのもよくわからないが(笑)
だからさ、たとえばNHKの朝ドラみたいな。ハイカラさんみたいな。
和服と洋服来た人がごっちゃな時代、みたいな。
戦後まもなく、みたいな。なんの戦争かは知らないけど。
オレはそういう時代のものが嫌いなんだ。
正確には、嫌いも何も、そもそも読むことがない。
時代小説とかいわれる、もっと古い時代のものも
読むことがない。戦国時代のなんかとかも。
坂本竜馬のなんかとかも。
オレは現代ものが好きなんだ。
さらに言えば未来的なSFチックなジャンルも好きかな。
長々と書いてしまったが、そんなこんなで
今まで三島由紀夫の小説は読んだことがなかったんだ。
なんだけど、今回、ある知人になんかおもしれー小説教えてけれ、
っつったら、これを薦めてくれて。
やばい、と思った。
まずいやつがきた、って(笑)
その昔、同じ職場の人におもしろいよ、って「ハリーポッター」を
借りたときの悪夢を思い出した。
ファンタジーもダメなんだよ、オレ。
読んでも読んでもページが進まないあの苦痛(笑)
とにかく読めなかった。
でも、せっかく本を貸してくれたんだから、と思ってがんばって読んだ。
それはバカが読書感想文の宿題で苦労するかのように。
そんな悪夢。
今回もオレの苦手とするジャンルに違いない。
やべーな、って。読めるかな、って。
ただ、お勧めしてくれた人も、おまえにはおもしろさ
わからないかもな、って言ってたし(笑)
おもしろいっていうか、「美しい」んだよ、って難しいこと言うし。
ダメならダメで、アレだな。そう思って読み始めた。
やっぱりダメそうだった。最初は。
でも、なんとかその雰囲気をつかむと、あとは、もう、アレだ。
すごいな、三島由紀夫、そう思った。
表現がいろいろとアレですごいな、って。
バカみたいな感想で申し訳ないが(笑)
おもしろかったよ。よかった〜おもしろく読めて。悪夢よみがえらないで。
まぁ、「美しい」については、それほど感じられなかったが(笑)
っていっても、ストーリーは大したことないんだ。オレが言うのもなんだけど。
貴族の禁じられた恋、的なさ。
そんだけ。
なのに、なぜこんなにドラマチックなんだろう。
もちろん、三島由紀夫の表現力の高さによるものなのだが
やはりそれは物語の「時代」だろう。
この大正時代的な(正確なところは自信ない)日本が舞台だからこそ、の
物語だ。
携帯電話があったら成立しない密室トリックがあるように
その時代だからこその禁じられた恋物語だ。
で、オレはこの小説について、ほとんどなにも知らない状態だったんだけど、
知っていたのは四部作の一作目、ってことだけ。
「豊饒の海」って長編大作の一作目が「春の雪」ってことで。
なんかエライ長い物語のはじまりだな、って。
この後ネタばれあるから、なんにも知らないで読もうと思っている人は
見ない方がいいよ。ま、そんなやついないと思うけど(笑)
「春の雪」は十代の青年が主人公でさ。
オレはてっきりその青年が四部作を通して成長していくのかな、
とか思ってたんだよ。
そしたらさ、一作目のこれの最後にさ、
死んだわ(笑)
「え?」って。
本当に最後の最後、最後の1行で死んだわ。19歳で。
ビビッた。
どうなるんだろう、この後四部作までの物語。
あえて調べないでおこう。読むかわかんないけど(笑)
そういえば、その昔、大学生の頃だったかな、
バンド関係の飲み会で、三島由紀夫が好きなやつと
どっちが優れた文学か言い合ったことあったな。
オレは安部公房押しで。
やれ三島だ、やれ安陪だって。
オレ、三島、読んだことなかったのにね(笑)
三島由紀夫、なかなかおもしろかった。
「春の雪」は映画もあるみたいだから見てみたい。
たぶん、クソ映画なんだろうけど(笑)
2015.12.17 |
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