BEATCHILD1978
監督
佐藤 輝
音楽監督
佐久間 正英
出演
ザ・ブルーハーツ
BOOWY
ハウンドドッグ
他
2013年10月26日
全国公開
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映 画
「古き良き時代」
この言葉がこれほど似合う風景もそうそう無いのではないか。
記録映画、ということでいいのかな。
今から26年前、1987年8月22日に九州は熊本県で行われた
オールナイト野外ロックフェスティバルの模様を約2時間にまとめた映画だ。
この映画のキャッチコピーに「史上最低で、最高のロックフェス」とある。
まさにその通りの内容だった。
「最低」なのは天候だ。
それはとんでもない「土砂降り」だ。見た感じ気温もかなり低く寒そうだ。
今なら間違いなくイベント中止になるレベルだろう。
そして、フジロックが始まる遥か10年前ということもあって、そこに集まった
7万人以上のフェス慣れしていない人々はその天候をしのぐ術を持っていない。
「ゴアテックス?なにそれ」状態だ。
せいぜいレジャーシートをかぶるとか段ボールをかぶるとか。
足元はどろんこ状態だ。どろんこっつうか、けっこうな斜面だから
川のように泥水がジャージャー流れているんだ(笑)
死人が出てもおかしくなかっただろう。
実際、何百人もの人が体調をくずし、救急車などで運ばれていったらしい。
「最高」なのはもちろん、音楽だ。
出演アーティストを見てほしい。
ザ・ブルーハーツ
RED WARRIORS
岡村靖幸
白井貴子
ハウンド・ドッグ
The Street Sliders
BOOWY
尾崎豊
渡辺美里
佐野元春
今、30代後半〜50代前半の人は、このどれかに、もしくは多くに
「青春」を感じる人も多いのではないだろうか。
そんな人たちは間違いなく楽しめる映画だ。
当時からこんなのダセーよ、と思っていた人もいるだろうが
そういう人も見てみたらいいんじゃないかな。
そのパワーに圧倒されるはず。
今でこそ「ロック?ダサいっす」「なに熱くなってんすか?」的な
若者も多いのかもしれないが(笑)
「ロックが、音楽が時代を変える」そう本気で思われていた時代が
確かにあったんだな、そう思わずにはいられない。
オレはこの映画を見ている最中、何度か爆笑した。
ライブ映像とともにガンガン音が鳴っていたから、ま、周りには
それほどバレていなかったと思う(笑)
オレが映画館に行った日の客は、まぁ、30人くらいいたかな。
あまりヒットしているとは言えないだろう。
家族連れ的なのが何組かいたように見えたが、なんだろう、
「お父さんの好きだったバンドの映画観に行こう!」的なアレだったのかな。
とにかく、なぜオレは爆笑したのか。
みんなすごくダサくて、そしてすごくかっこよかったからだ。
ファッションやステージングは80年代のそれだ。
ダサい(笑)尾崎豊のリハーサル時の服装なんて
少々丈の短いケミカルウォッシュジーンズになんか変なジャンパーだ。
その辺にいる普通の人よりダサかったのではないだろうか。
しかし、ひとたび野太い声で「シェリーなんとかかんとかで」と歌いだせば、
もう、なんだ、景色が変わる。
本番の土砂降りの中でステージに這いつくばりながら尾崎が歌えば
どうなるかある程度想像はつくよな?(笑)
もう、それは宗教といっていいのかもしれないカタルシス。
ブルーハーツは想像そのまんまのステージで笑ったし
RED WARRIORSはダイアモンドユカイの歌の上手さに笑った。
岡村ちゃんのなんだかよくわからないキレキレダンスに笑ったし
佐野元春の完成度に笑った。
いや、とにかくどのバンドも「ボーカル」がすごい。
今のバンド敵わないところがそれだろう。
歌が上手いのは当たり前。その声量、存在感がハンパない。
やっぱり「歌」なんだよ。
で、特に大爆笑したのが、ハウンド・ドッグの大友康平と
BOOWYのヒムロックだ。
いや、オレさ、ハウンド・ドッグはあまり聴かなかったから
よく知らないんだ。「ff」とかヒット曲は知ってるよ。
でも、どんなライブをやっているのかはよく知らなかったんだ。
もうさ、すげーんだよ(笑)そのパワー。
マイクスタンドぶんぶん回して「うぉうぉうぉうぉ〜」って。
よくモノマネされるじゃない?大友康平。
もう、そのまんまっつうか、それ以上で(笑)
「今日は、おまえらが主役だぜぇ〜〜〜」
って客に向かって叫ぶベタなMCもサマになっててさ(笑)
お客さんもハウンド・ドッグの時が一番盛り上がっていた気がするな。
まぁ、時間帯ってのもあるんだろうけど。
トリの佐野元春なんて土砂降り後の夜明けの時間帯だからね。
そりゃ客も座り込んで寝てるわ(笑)
で、ヒムロック。
もうね、一挙手一投足かっこよすぎなんだ(笑)
もう、一つ一つのポーズがキメキメで。
まぁ、みんなが想像できる範囲のおなじみのヒムロックの動きではあるんだけど。
客にマイク向けるポーズだけでかっこいい(笑)なんか他のやつらと違うんだ。
土砂降りでずぶ濡れなのにかっこいい。
そこにいるのは「スター」だ。
ヒムロックに限らず、ステージには一般人とは違うスターがいた。
その辺の大学生がこきたねー私服で小難しい歌をボソボソ歌ってるような
最近のバンドとはオーラが違う。
「愛がすべてさ」と全力で歌う。
ダサい。すごくダサい(笑)
だけどすごくかっこいい。なんでだろ。
いやー、オレは出演バンドのほとんどをよく聴いていたから
かなりおもしろかったよ。
当時のバンドにあまり詳しくない人でも、有名な曲ばっかりだから
楽しめると思う。
そういえば、「最低」なのが天候以外にもあった。
いろいろなレビューでも見かけるが、音楽とライブ映像は
最高なんだが、映画の編集というか、まとめ方にちょっと問題がある。
ところどころにナレーションが入るのだが、うるせーだけだ。
なにもなくていい。その音楽と映像だけで十分伝わる。
そして、当時のプロデューサーみたいな人が、もちろん今は
クソじじぃになってるそいつのインタビューっつうか
当時の客に対する謝罪みたなシーンがあるんだけど、もう、クソ。
クソとしか言いようがない。
なんか痴呆老人がふざけたこと言ってるようにしか見えない。
「ん?最後に笑いもってきた?」そう思わせる場違いなインタビュー。
絶対にいらなかった。
そして、この映画のテーマ曲?みてーのが最後の方に何回も流れるんだが、
(出演バンドにはなんの関係もない、なんかよくわからないクソユニットの曲)
なんなんだ、アレ。
絶対にいらなかった。
以上を差し引いても、音楽好きのおっさんおばさんは(笑)かなり
楽しめる映画だと思う。若者も楽しめるとは思うけど。いろんな意味で。
札幌はススキノのスガイで今月終りくらいまで上映してるのかな。
ホントかどうかしらないけどDVD化はしないみたいだから
たまには映画館に行ってみよう!
2013.
11. 11
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