2017/09/27(水) 『親切心』 |
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オレは普段、できるだけ人に親切にしようと心掛けている。
そう見えないと思うが。
例えば、地下鉄駅の通路に手袋が落ちていたとしよう。
多くの人は無視して通り過ぎると思う。
オレはなるべく拾う。絶対ではない。なるべく、だ。
そして、近くの手すりなんかに、かけておく。
できることなら、駅事務所なんかに届けるのが
本当の親切だろう。
しかし、オレは、そこまではしない。
なぜなら、めんどくさいからだ。
オレはそこまで親切じゃない。
手袋一つで、そうなるとは思えないが、
何か書類に記入、なんてことになったら
めんどくさすぎる。オレもそこまでヒマじゃないんだ。
だから、近くの手すりにかけておく。
それが、オレの親切の限界だ。
今朝、こんなことがあったんだ。
横断歩道で信号待ちをしていた時だ。
けっこうな人数が待っていたと思う。
オレの前に女性が立っていたんだ。
20代かな。スーツを着てバリっとしている。
肩から黒いショルダーバッグをさげている。
そのバッグにバチンって何かが当たったんだ。
女性は気付いていない。
カメムシだった。
緑色のカメムシだ。触るとクッサいにおいのするアイツ。
バッグにカメムシがとまっている。
黒のバッグに緑が映える。
インスタ映えだ。
違うか。
ここで、オレの親切心がうずく。
知らせてやった方がいいだろうか、と。
だって、このまま会社にカメムシを連れていきたくは
ないだろう。
カメムシ女、なんてあだ名がついたら大変だ。
オレの横にいるやつも、たぶん気付いているはずだが
行動を起こさない。
オレの出番だろか。教えてやった方がいいだろうか。
いや、でも、「あの、すみませんカメムシが」と
言ったところでカメムシが飛んでいってしまったら
どうすればいいんだ。
「あの、すみませんカメムシが」
ブ〜ン
「バッグにとまっていたんですけど、今飛んでいきました」
嫌だな。そんな状況嫌だな。
朝から見知らぬ女性にカメムシが飛んでいったことを
報告したくない。そんな気持ち悪い男になりたくない。
信号が変わった。
オレはなにもなかったように、横断歩道を歩きだす。
それが、オレの親切の限界だ。
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