2011/04/16(土) 『もうやらない』 |
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だから嫌なんだよ、やっぱりやらなきゃよかったよ。
そう思ったのは、なんだ、ほら、福引っつうかクジ引きっつうか
抽選だ抽選。
とあるショッピングモールでの出来事だ。
クリスマスシーズンや年末年始なんかによくある企画だ。
たとえば5,000円分買い物したら一回抽選できて
まぁ、海外旅行が当たったりすることもあるのかな。
時にはガラガラなんか回してポチって玉がでてくるやつだったり
スクラッチだったり三角くじだったりするアレだ。
そこのショッピングモールがオープン何周年記念だかで
それをやっていたんだ。
オレはこの福引みたいなのが嫌いなんだ。
ま、「嫌い」まではいかないにしても好きではない。
全然ワクワクしない。できればやりたくない。
だって当たんねーもん。
まずもって「福引」ってネーミングが気に入らない。
きっとそこには紅白の幕がしてあって、間違って何か
当たってしまおうものなら「チリンチリン」と鐘を鳴らされるんだ。
バカにしてんのか、こら。
ま、どうせ当たんねーけど。
クリスマスシーズンなんかだと、もんのすげー
たくさんの人が並んでて、そこまで時間つかって
福引したくねーっつう。
どうせ当たんねーし。
だから、いつもは帰り際に福引の列に並んでいる
見知らぬ人に抽選券をあげたり、ま、期間が長い場合は
友人にあげたり、とにかくオレは福引をしないんだ。
当たりっこねーから。
で、とにかく、今日、それをやっていたのだが
特に大きな買い物をしたわけではないのだが
「補助券」なるものがジワジワたまっていき
いつの間にか福引1回分のそれがたまってしまったんだ。
なぜだろう。「いつの間にか券がたまっていた」ということだったり
あまり近場ではないそこのショッピングモールは
「めったに行かない場所」だったり、抽選会場が
「そんなに混んでいなかった」とか、とにかく小さないくつかの
きっかけによって抽選してみっかな、と思ってしまったんだ。
混んでいないといっても、まぁ、10人以上並んでいたわけだが。
全然興味なかったので、いったい何が当たるのかも
わからずに並んでいたんだ。
オレの番がきた。えらく作り笑顔の変な衣装を着た
キャンペーンガールみたいな女性に券を渡す。
「はい、一回分ですね。」
「一回分しかねーのかよ貧乏人が」
その作り笑顔にそんな声が聞えたような気がして
すでにそのとき福引をしている自分に後悔していた。
目の前の箱の穴に手を突っ込んでクジを引いた。
そのクジはスクラッチでもなければ三角クジでもなく
だから二次的なアクションを必要としない、いきなり
結果が見えてしまう2センチ四方くらいの小さな薄っぺらい
紙だった。
白い紙面に真っ赤な文字で「ハズレ」と書いてあった。
キャンペーンガールは「ごめんなさい、ハズレです」と
今度はとても残念そうな表情をつくって言った。
あまりにも機械的でたぶん今までもこの後も繰り返さるであろう
その動きを見て、もしかしたら目の前にいるのは
ロボットなんじゃないか、そう思えなくもなかった。
そして、ポケットティッシュを1つくれた。
とてもはずかしかった。
大の大人の男がせっせと補助券を集めて並んで
福引をして、その結果がポケットティッシュ一個だ。
オレはロボットみてーな女にポケットティッシュを一個もらって
その場を後にした。
一刻も早く走ってその場を去りたい気持ちだったが
そうすることで余計に惨めになるんじゃないか、そう思って
出来る限りゆっくり一歩一歩を力強くその場を去った。
外は強い雨が降っていた。
最近めったに飲まなくなった缶コーヒーを自動販売機で
買って飲んだら、とても甘かった。嫌な甘さだった。
オレは車に乗って、さっきもらったポケットティッシュで
鼻をかんだ。ワイパーを動かしたらキュっと音がなった。
オレはもう二度と福引はしないと心に誓った。
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