エロチカのいろんな話


2.ウンチイーティングナウはラブソングである
    
「ウンチイーティングナウはラブソングである」

オレがそう言っているわけではない。
誰かが言ったんだ。
しかもこの曲を聴いた複数の人が。

複数って言ったって、100人がそう言ったわけでは
もちろんない。
100人どころか10人もいない。3人くらいだろうか。

でも、とにかく複数だ。
複数の人がオレにそう言ってきたことがある。

「ウンチ、あれっていきなり最後ラブソングになるんだね」
的な。もちろん、ふざけて。
だからなんだっつー話だけど。
そして、この話はこれ以上広がらない。

いや、コラムのタイトルって、こういう感じがいいのかな、
って。知らないけど。

とはいえ、まぁ、とりあえず歌詞を見てみよう。
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「ウンチイーティングナウ」

昨日、自分のクソ食った ちょっとニオイがきつかった
だから鼻つまんで食った 舌の上でチロチロしてみた

意外にもウマかった 初恋の味に似ていた
まったりとしてしつこくなく 口あたりもさわやかだった

だけど何かが足りない 愛やトキメキじゃなくて
採りすぎてしまったビタミンCやカルシウム
そんなものの塊だ

Ah ウンチイーティングナウ
Ah ウンチイーティングナウ

食糧難になっても人一倍生きれるように
今から食っておくのさ

だけどアイツのはどうだ?色・ツヤ・固さ・ニオイも完璧
そして出てきたビタミンAや鉄分やカリウム
どれをとっても俺には不可欠だ

Ah ウンチイーティングナウ
Ah ウンチイーティングナウ

たとえ二人になったとしても傷をなめ合うように
互いにいいもの出そうよ

俺にはおまえが必要だ

Ah ウンチイーティングナウ

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確かに最後、唐突ではあるが
互いを必要としている男女の恋愛模様が
見えなくもない。いや、見えねーけど。

最初「人一倍生きれるように」と自分本位だった
主人公が「愛する人のために、いいものを出そう」と
変化している様は、ある種の成長物語とも
言えなくもない。言えねーけど。

しかし結局何を歌っているのかよくわからないと思う。

オレもよくわからない。

なぜならオレが作った曲ではないからだ。

エロチカの曲の多くは、オレの作詞作曲に
よるものなんだけど、そうじゃないものの一つに
この「ウンチイーティングナウ」がある。

ここはハッキリさせておきたい。オレの名誉のために(笑)
オレが「ウンチイーティングナウ」とか、そんな
下品なことを書くわけない。

しかし、もうひとつハッキリさせておいた方が
いいかもしれないことがある。
この曲の作者の名誉のために(笑)

作者については後述するが、まず、この曲はもともと
「ウンチイーティングナウ」というタイトルでは
なかったんだ。

「不消化物」というタイトルだったんだ。

そして冒頭の「昨日自分のクソ食った」ってとこも
実はオレが勝手に変えてしまったもので
もともとは「昨日不消化物食った」って歌詞だったんだ。

いや、歌詞、とかっていう話でもないけど(笑)

ライブで演奏するにあたって、よりキャッチーにいこう、
とか思って(笑)

果たして「昨日自分のクソ食った」が
キャッチーなのかどうかは議論の余地はあるが。

もともとは
「ウンチの中に残っていた不消化物を食べた」
とかいう物語だったと、思うんだ。
例えば、トウモロコシとかシラタキとか。

きたねーな。物語じゃねーし。

だから、ウンチそのモノを食べるわけではないから
「昨日自分のクソ食った」と歌えば
若干ニュアンスが違うのかもしれない。

いや、どーでもいいわ(笑)

まずこの曲の基本情報を確認しておこう。
今でもライブで演奏している曲の中では
最も古い曲の1つになる。
1992年に発表した1stアルバムに入っている曲だ。

この曲ができた経緯を思い出してみる。

「 いつの間にかできていた」

なんて言えば、驚く人は多いだろうか。
そんなわけねーだろ、って。

さらに言えば、誰がつくったかも、
オレはよくわかっていないんだ。

いや、一人は知っている。
エロチカ初代ドラマーの加納という男だ。

ちなみにライブは一度もやっていない(たしか)
主に打ち込みでドラム音源を作っていた男だ。
だからドラマーというよりはマニュピレーターと言った方が
いいのかもしれない。

マニュピレーター言いたいだけだろ。

当時、オレ達の間で曲作りは、言ってみれば
ただの遊びだったんだ。「ライブのために」なんて
考えることもなく、ただ曲を作っては録音していたんだ。
意味もなく。

オレが曲を作ると加納に電話して
「ちょい、ドラムつくってや」みたいな感じで
加納の家に集まって、っていう。

ずいぶん、クリエイティブな遊びしてたもんだな(笑)

で、加納もちょくちょく曲作ってて。
で、ある日、いつものように加納の家に行ったら
曲できたわー、つって。
「ウンチイーティングナウ」(もとは不消化物)があって。

いつの間にかできていたんだ。

作曲は加納で作詞は加納ともう一人Hくんと二人で
書いた、とかだったと思うが、その辺も
オレはよく知らないんだ。

それから程なくしてHくんはこの世を去ってしまうんだ。
いや、こんなところにサラっと書く内容でもないんだけど
とにかく死んだらしいんだ。

でも、確証はない。なぜならHくんが死んだ、という
連絡をしてきたのが、友人の中でも一番信用できない
やつからの電話だったからだ(笑)

いや、笑ってないで確かめろや、って話だが
でも、オレとHくんはそれほど親しい間柄ではなかったし。

まぁでも死んだのかな、やっぱり。
だから、ある意味「ウンチイーティングナウ」は
Hくんの遺作と言ってもいいのかもしれない。
「ウンチイーティングナウ」を作って死んだ男、
なんつって。

いや、それはダメだろ。

「ウンチイーティングナウ」の話が
まさか友人の死に繋がるとは、誰も想像していなかった
だろう(笑)
いや、(笑)とかでくくる話でもないんだけど。

そんなことがあったから、今もオレはこの曲を
歌い続けているんだ。
どこかのライブハウスにひょっこりHくんが
現れる気がして。

まぁ、ウソだけど。

しかし、この世に、歌いだしが「昨日自分のクソ食った」
以上にデタラメな曲は存在するのだろうか。

                         (2016.12.16記)

 
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